請求書出し忘れの際に知っておきたい法律的な期限について

 2019.11.25  ヤマトクレジットファイナンス株式会社

企業にとって「代金未回収」は何としてでも回避したいリスクの1つです。日常的な取引の中では「請求書を送付したのに期日通りに支払いがされない」という事態が多々発生します。また、「請求書をうっかり出し忘れていた」ということもあるかもしれません。その際に気になるのが「請求書の有効期限はいつまでなのか?」という点です。実は、請求書は法律によって有効期限が定められており、その期限を過ぎると債権が消失する可能性があります。本稿では、請求書の有効期限と、代金が支払われなかった場合の対処についてご紹介します。

請求書の有効期限

民法の第173条では、2年間債権を行使しないと以下に該当する債権が消失すると説明しています。

  1. 生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権
  2. 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権
  3. 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権

引用:電子政府の総合窓口e-Gov『民法』

要するに、支払い期日の翌日から2年間の間に債権が行使されなければ、請求書の有効期限が切れてしまい債権が消失することになります。この対策として「請求書を送付し続けることで時効を伸ばす」ことを思いつく方が多いでしょうが、残念ながら請求書をいくら送付し続けても2年間の有効期限が伸びません。

請求書の有効期限を中断するためには、請求ではなく「催告」という行為が必要になります。

 

請求書の有効期限を中断する行為「催告」について

催告とは裁判所に支払い督促申立など、権利の主張を行うことです。請求も広義の意味では催告という行為に含まれますが、あくまで「代金を支払ってください」という通知に過ぎないため、請求書を送付し続けても有効期限を中断することはできないので注意しましょう。

請求書の有効期限を中断するためには催告が必要です。ただし、催告といっても複数の種類があるため、取引内容や状況に応じて選択することがポイントです。

 

  • 訴状の提出

時間と手間はかかりますが訴訟を起こすことで、訴状が提出された時点で請求書の有効期限が中断します。

  • 支払い催促

債権者が契約書や債務確認書といった証拠品を持参し簡易裁判所に申し立てると請求書の有効期限を中断できます。

  • 調停申し立て

調停委員会が当事者の言い分を聞き、必要ならば事実調査を行い、条理にもとづいて当事者双方の歩み寄りを促し、当事者の合意によって解決を図る手続きです。

  • 即決和解申し立て

裁判所を通さず訴状提出前に和解を行うことです。余計な費用はかかりませんし、和解が上手くいけば請求書の有効期限が中断します。ただし、和解したその日から1ヵ月以内に訴状の提出をしないと請求書の有効期限の効力が無くなります。

  • 催促書類の提出

裁判になる前に「返済してほしい」という内容の書類を債権者から債務者に向けて、内容証明郵便で送付することで一時的に請求書の有効期限を中断できます。

  • 差し押さえ

訴訟や支払催促によって裁判所が債権者に強制執行の許可を出すと、債権者が債務者の財産を差し押さえることができ、これにより請求書の有効期限が中断します。ただし差し押さえには債権者にリスクもあります。すべての財産を差し押さえられるわけではなく、かつ判決が得られていない状態で債務者の預金等を拘束するため、債務者への配慮が必要です。

  • 債務の承認

債務の承認とは、債務者が債務の存在を認めることです。債務者が1円でも返済しており、支払い約束証などにサインをした場合、債務の承認にあたり請求書の有効期限が中断します。さらに、債務の承認は時効期間が満了した場合でも請求書の有効期限を中断する効果があります。

 

段階的な請求について

1回目の代金支払い期日において、請求書を送付したにもかかわらずそれに応じなかった場合、即座に催告行為に出るのではなく、一般常識的な配慮を含ませて別の請求行為を行うのが一般的です。そもそも、請求に応じなかった理由が自身にあるかもしれませんし、まず大切なのは事実確認を行った上で、なぜ取引先が代金を支払わないのか?という理由を明確にすることです。ここでは、取引先から代金が支払われなかった場合の行為について、段階的に説明します。

1. 販売側に問題がないかを確認する

代金支払いが確認されない請求案件に関しては、最初に販売側(自社)に問題がないかを確認しましょう。前述のように、請求先の間違いや請求内容の間違いによって、取引先で請求が受理されていないケースが考えられます。本来なら請求書の送付に関係なく代金は支払われるべきものですが、取引先によっては請求書受理のプロセスが完了しないと代金を支払えないルールを設けているかもしれません。間違いを改めて請求書を再送すれば、スムーズに代金を回収できる場合がほとんどです。

 

2.メールまたは電話でコンタクトを取る

販売側の請求書や対応に間違いが無かった場合は、メールまたは電話にて取引先の支払い担当者とコンタクトを取ってみましょう。どちらかといえば、電話でコンタクトをとった方が、代金が支払われなかった意図を明確に知れますし、販売側の意向を伝えやすいかと思います。念頭に置いていただきたいのは、「この時点でも販売側(自社)の問題で代金が支払われていないケースがある」ことです。

提供した商品やサービスに対してクレームが入っている場合、代金が支払われないことが考えられますし、その情報を知らずに催促の連絡を取ると取引先を怒らせる結果になります。カスタマーサービスや営業部門、請求部門が分離している場合は、各部門での情報共有をしっかりと行っておきましょう。

クレーム等も無い場合は代金請求を直接的に行います。取引先にも事情があるので、猶予できる事情かどうかを十分に検討した上で次の代金支払い期日を設定し、取引先に伝えましょう。ちなみに電話の内容は録音するかして、後々「言った」「言っていない」のトラブルが発生しないよう注意してください。

3. 催促状を送付する

メールや電話などによる直接的なコンタクトにもかかわらず期日通りの代金支払いが確認できなかった場合は、催促状を送付します。督促と催促の意味合いは似ていますが、督促の方が強制力を持たせているというニュアンスがあります。催促状では「未払金に関し、〇月×日までに確実な支払いをお願い申し上げます」といった文言で、代金支払いを催促します。催促状は正式な書面として送付することをおすすめしますが、代金未払いに対して催促したという事実が大切なので、電報など簡易的な連絡手段でも問題ありません。

 

4. 督促状を送付する

催促状を送付しても期日までの代金支払いが確認できなかった場合は、督促状を送付します。督促状では支払いに強制力を持たせるために内容証明郵便で送付し、「〇月×日までに未払金の支払いが確認できなかった場合は、法的処置に移らせていただきます」といった文言を掲載します。内容証明郵便で送付することで、「誰が誰に、どんな内容の文書を送付したのか」を郵便局が証明してくれるため、法的効力を持たせられます。

 

5. 法的処置を取る

再三の督促行為にもかかわらず代金支払いが確認できなかった場合は、最終手段として法的処置に移行します。前述した催告行為のうちから適したものを選択して実行しましょう。

 

代金未回収リスクを低減させよう!

いかがでしょうか?請求書には有効期限があることから、期日通りに代金が支払われなかった場合は適切に管理して、2年以内の債権を行使するようにしましょう。また、代金が支払わなかった際の対策ばかり考えるのではなく、代金未回収リスクを低減するためも活動も大切です。その際は、取引先の与信管理等を徹底的に行い、そもそも代金未回収が起きないような取引を心掛けてください。また、クロネコ掛け払いなどのサービスを利用すればこのようなリスクを低減することが可能ですので、この機会にご検討いただければ幸いです。

 

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