請求書払いとは、商品やサービスを購入した後、定められた支払期日に代金を支払う「後払い形式」の決済方法です。「掛け払い」「後払い」とも呼ばれ、BtoB(企業間)取引においては非常に一般的な支払い手段とされています。この取引形態は「与信取引」とも言われ、取引先の信用力を前提に、代金支払いを先延ばしする仕組みです。信用が成立している取引先との間では、業務効率や資金繰りの観点からも非常に合理的です。ただし、初めて取引を行う相手や、まだ信用関係が築かれていない企業に対しては、前払いまたは都度払いを採用するケースも少なくありません。支払遅延や未回収のリスクを抑えるため、企業の与信判断が重要になります。本記事では、請求書払いの基本から導入の流れ、実務で押さえておくべきポイントまでを分かりやすく解説いたします。これから請求書払いを導入する企業様や、対応業務を見直したいご担当者様はぜひご一読ください。
BtoCにも広がる請求書払い
請求書払いは、企業間取引に限らず、一般消費者を対象としたBtoC取引でも採用されています。例えば、通販サイトで商品を注文し、商品受取後にコンビニエンスストアなどで代金を支払う「後払い決済サービス」はその代表例です。また、ガスや電気、水道などの公共料金で一般的な収納代行サービスも請求書払いの一形態と捉えることができます。近年ではPaidyなどのスマートフォンで完結するBNPL(Buy Now Pay Later)サービスが登場し、1カ月分の支払いを翌月にまとめて請求する方式も増えています。これらは従来の紙ベースではなく、電子請求書やオンライン通知で完結しますが、紙か画面かの違いはあっても支払いタイミングと手続きの流れ、仕組みは本質的に変わりません。
請求書と領収書の違いと注意点
請求書とは、「○○の代金として、○○円をお支払いください」といったように、取引先に対して代金の支払いを求めるための書類です。商品やサービスを提供した企業は、その対価を請求する権利(債権)を持っており、支払期日が近づくと、請求書を作成・発行し取引先に送付することで支払いを促します。一方、商品やサービスを受け取った側には、代金を支払う義務(債務)が生じ、請求内容に基づいて対応する必要があります。これに対して、領収書は「○○の代金として、○○円を確かに受領しました」といった文面で発行され、支払いを受け取ったことを証明するための書類です。一般的には現金で支払われた場合に発行されるケースが多く、銀行振込で支払われた際には通帳の記帳内容や振込明細書が支払いの証拠となるため、領収書は省略されることもあります。なお、請求書・領収書・振込控えなど、取引の証拠となる書類は、いずれも法人税法や消費税法の定めにより、原則として7年間の保存が義務付けられています。税務調査や会計監査の際に必要となるため、適切に保管しておくことが重要です。
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請求書払いの導入方法
請求書払いを導入する際、売り手企業として取引先の信用力を十分に見極めることが重要です。後払いという形態上、商品やサービスの提供後に代金を回収することになるため、未回収リスクを防ぐための「与信管理」は欠かせません。まずは、取引開始前に決算書や商業登記情報、業界動向などをもとに、相手先の財務状況や支払能力を確認します。自社内で判断が難しい場合は、外部の信用調査機関や与信管理サービスの活用も有効です。与信審査を通過した後は、締め日・支払期日(支払いサイト)や取引限度額、遅延時の対応方針などを明確に定めた取引条件書を取り交わしておくことで、後のトラブルを未然に防ぐことができます。請求書払いを導入することは、取引のハードルを下げ、商談成立の可能性を高める一方で、資金回収リスクも伴います。売上の拡大と債権の健全性を両立させるには、適切な管理体制と社内フローの整備が求められます。また、与信枠の見直しや支払い状況の定期的なチェックも忘れてはならないポイントです。継続的なモニタリングによって、経営環境の変化や支払遅延の兆候を早期に把握することが可能になります。
請求書の作成方法と記載事項
請求書の作成には、Excelや会計ソフト、クラウド型の請求管理ツールなど、さまざまな方法があります。現在では、業務効率の観点から手書きの請求書はあまり見られなくなりました。請求書には以下のような情報を正確に記載することが求められます。
- 宛先:取引先の会社名・部署・担当者名を記載し、誰宛の請求かを明確にします。
- 請求書番号:取引データの一元管理や問い合わせ対応のために欠かせません。
- 発行日/支払期日:取引の期間を明確にするために重要で、再発行時でも原則として修正しないのが通例です。
- 会社名/角印:押印は法的に必須ではありませんが、書類の信頼性を高め、後々の認識違いやトラブルを未然に防ぐ効果が期待できます。
- 請求書のタイトル:都度払い方式の場合は、請求書のタイトルを「請求書」とシンプルに記載します。継続的な取引に基づく掛売方式の場合には、「○○年○○月分御請求書」など、請求対象の期間を明示したタイトルを記載します。
- 未収金の繰越:請求書を作成する際に、過去の取引において未収金が残っている場合は、その金額を明記しましょう。
- 商品明細(商品名・数量・単価):正確かつ漏れなく記載することが重要です。
- 合計金額(税込表示):最終的な請求金額は、ひと目で分かるように強調することが大切です。金額は「税込」で記載する必要があるため、「税抜金額」と「消費税額」の両方を明記した上で、「税込の合計金額」を分かりやすく表示するよう心がけましょう。
その他にも振込先情報や振込手数料の負担区分など、記載事項は多岐にわたります。請求書の不備は取引先との信頼関係にも影響するため、内容を十分に確認したうえで発行するよう心がけましょう。
支払い遅延時の適切な対応
複数の企業と取引を行っていくと、請求書に記載された支払期日までに代金の入金が確認できないケースが出てくることもあります。未入金の理由はさまざまでしょうが、期日を過ぎたという事実は変わらないため、まずは丁寧に電話やメールで確認のご連絡を行っていくことが大切ですます。
また同じ内容の請求書を再発行・再送付する際には、あわせて「本状と行き違いでお支払いいただいた場合は、何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます」といった一文を添えておくと、ビジネスマナーとしても好印象を与えます。また取引先が請求書の支払期日までに入金を行わなかった場合には、段階を踏んで対応することも重要です。
債権側に問題がないか確認
まずは、債権者である自社に連絡ミスや請求内容の誤りがないかを確認します。まれに、自社の対応に原因があるケースも存在するため、冷静に事実確認を行いましょう。
電話で督促
自社の対応が正当でまったく非がないことが判明すれば、次の段階である「催促行為」に移ります。まずは電話による催促を行い、できる限り速やかな入金を依頼します。電話は即効性が高く、経理担当者や責任者と直接対話できる点が強みです。
催促状を発行・送付
電話でも対応が得られなかった場合は、文書による催促状を送付します。内容としては「未収金に関し〇月〇日まで確実な支払いをお願いします」という文言で支払いを催促することで、記録として残すことができ、後々の法的対応にも備えることができます。
督促状を発行・送付
さらに支払いがなければ、督促状の送付へ進みます。督促状では支払いの強制力をより持たせるために内容証明郵便で送付し、「〇月〇日までに入金確認が取れなかった場合、法的手段に入ります」といった文言を記載するのが一般的です。相手への心理的な圧力となり、未払い解消につながることもあります。
法的措置を取る
最終手段としては、弁護士への相談や少額訴訟など、法的措置を検討します。実際に法的措置を取らずとも、その意志を示すだけで支払いを促す効果があります。
支払いの遅延は、事業運営にとって重大な資金リスクにつながる可能性があります。だからこそ、請求書を発行する側としては、単に「催促する」だけでなく、取引先の事情に配慮しつつも毅然とした姿勢で臨むことが大切です。また、トラブルを未然に防ぐためには、契約段階で支払期日や遅延時の対応フローを明文化しておくことが有効です。万が一に備えて、回収ルートや外部機関との連携体制を整えておくことも、企業としての健全な与信管理の一環と言えるでしょう。
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「クロネコ掛け払い」など外部サービスの選択肢
請求書払いは、複数の取引をまとめて請求・支払いできるため、経理処理や資金繰りの効率化に寄与します。また、取引件数が多い企業にとっては、支払日を一元化できる点も大きなメリットです。一方で、未払いリスクを常に抱えることになり、売上はあっても資金が入ってこない「黒字倒産」の原因になることもあります。とくに新規取引先との与信管理には細心の注意が必要です。煩雑な業務やリスクを最小限に抑えたい場合は、与信審査・請求書発行・回収を一括で支援する「クロネコ掛け払い」などのサービスを活用するのも効果的です。請求書払いの導入を検討する際は、こうした長所と短所を十分に理解し、自社の業務や体制に適した運用方法を選びましょう。
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