今回は与信管理の基準や与信限度額の算出方法について外さないポイントをご紹介します。
BtoB(企業間)取引において与信管理を徹底し、未回収リスクを極力低減することは会社や事業が存続していく上でとても大切です。東京商工リサーチの調べでは、2017年に倒産した企業全体のうち46.3%が黒字倒産でした。つまり、経営を維持するための売上はあったものの、代金未回収によって資金繰りが悪化して経営が行き詰まったケースが少なくありません。
引用:2017年「倒産企業の財務データ分析」調査:東京商工リサーチ
こうしたリスクを低減するためにもやはり与信管理は欠かせません。では、具体的にどういった基準を設ければよいのでしょうか?
与信管理基準の設定ポイント
与信管理を徹底したい企業が最初につまずくことが基準作りではないでしょうか。一体何を基準に信用を評価するのでしょうか?これによって結果的に会社の未回収リスクが大きく変動します。そこで、まずは与信管理がどういった流れで行われるかを確認しましょう。
「与信管理とは」について調べてみよう!
①情報収集
取引先の信用を評価するためには何を置いてもまず情報が欠かせません。収集すべき情報は主に次のようなものです。
- 基本的な会社概要(企業規模、資本金、事業内容など)
- 決算書記載の情報(賃借、損益、キャッシュフローなど)
- 経営者および役員に関する情報(人物像や経歴など)
- 登記関連(不動産・債権譲渡・動産譲渡など)
- 将来的な事業計画(拡大、縮小、投資など)
- 新規取引先が希望する与信金額
これらの情報を収集するためにはインターネット検索や新規取引先からの直接入手、あるいは外部の調査会社に依頼する方法があります。
②収集情報の整理および評価
収集した情報はまず定量データと定性データに分けて整理します。
定量データ…決算上の情報や基本情報など数値で表される情報を指します。定量データは新規取引先企業の現状を表す情報なので、基本的にはこの定量データをもとに信用を評価していきます。
定性データ…数値では表されない情報を指します。経営および役員に関する情報や将来的な事業計画など、いわゆる新規取引先企業の「可能性」を評価するのが定性データです。定量データでの評価を基本としながら定性データでの評価を加えることで、より正確な信用を評価できます。
こうして整理したデータを絶対評価と相対評価という2つの軸から評価します。
絶対評価…あらかじめ定められた基準に沿って新規取引先の信用を評価する方法です。一般的には事前に用意された目標数値に対し、どれくらいの達成率を持っているかで判断します。
相対評価…新規取引先を個ではなく全体から捉えた場合の信用を評価する方法です。新規取引先が属する業界は自社の既存取引先などと比較して、どれくらいの信用があるかを判断します。
③与信限度額設定
評価した信用に応じて与信限度額を設定します。与信限度額は会社が安全に経営していくためのいわばボーダーラインです。与信取引をしてもよいギリギリの金額を設定するのではなく、未回収リスクも想定した上で、未払いが発生しても自分の会社が安定して経営していける金額を設定することが大切です。方法については後述します。
以上が与信管理の基本的な流れになります。では、どういったポイントに重点をおいて基準を設定すればよいのでしょうか?
ポイント①自社にとって安全に取引ができる取引先像とは?
与信管理でより基準作りが重要なのは定量データでの評価よりも定性データでの評価でしょう。なぜなら定量データは数値を見れば信用できるかどうかが明らかですが、定性データに関しては明確な基準がないと判断できないからです。ですので、自社が扱うビジネスに応じて安全に取引ができる取引先像とはなにか?を考えることが大切でしょう。
たとえば製造業とソフトウェア開発会社ではビジネスモデルが大きく違うので、取引先として理想の企業像、信用力の高い企業像が違うはずです。自社にとって理想の取引先像を明確にしておくことで、定性データでの評価を正確に行うことができ販売機会を逃さずかつ未回収リスクを低減できます。
ポイント②営業部門とは別に管理部門を設ける
与信管理基準を設定するにあたって営業部門が管理を兼任する場合があります。人材が限られている環境では仕方ないかもしれまれませんが、あまりおすすめはできません。なぜなら営業部門は売上を立てることが仕事であり、そのためには多少甘い基準を設けてもよいという傾向になりがちだからです。また直接お客様とコミュニケーションを取っているがゆえにバイアスがかかってしまうこともあります。なので与信管理は営業部門と切り離し、管理部門を設置して基準を設けることをおすすめします。
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与信限度額の設定方法とは?
ここでは与信限度額を設定するための2つの方法をご紹介します。
方法①売掛期間や手形期間から設定する
継続的な取引になるであろうというケースでは、売掛期間や手形期間に販売見込み額をかけて設定する方法がおすすめです。
たとえば「月末締め、翌月末振出、振出日起算60日手形」という取引があった場合を想定します。これはつまり取引が発生してから売上が現金化されるまで最大約4ヵ月かかるということになります。ですので、与信限度額はこの4ヵ月を想定して設定する必要があるでしょう。
たとえば月間販売見込み額が500万円にもかかわらず、与信限度額を1,500万円に設定してしまうと3ヵ月後には限度額に達してしまいそれ以上の取引ができなくなります。なので500万円×4ヵ月で最低でも2,000万円の与信限度額は必要です。多少の変動を考慮して2,500万円まで幅を持たせるのが理想でしょう。
基準が分かり易く、取引先の多い企業に向いている反面、少数の取引先に依存している企業にとっては限度額が大きくなり過ぎる可能性があります。
方法②純資産とウェイトからの設定
単発での取引が多い場合は取引先の純資産から焦げ付きの許容金額を設定して、各取引先のウェイトに応じて設定する方法がおすすめです。
たとえば取引先の自社純資産が3億円だと仮定して、その10%までの焦げ付きなら耐えられるとするならば1社あたりの与信限度額は単純計算で3,000万円になります。しかし、取引先によって信用は違うのでここでウェイトをかけます。
ウェイトとは取引先の信用に応じてかける利率です。たとえば信用が最も高評価の取引先に対してかけるウェイトが170%なら、与信限度額は5,100万円になります。反対に信用が最も低評価な取引先に対してかけるウェイトが50%なら、与信限度額は1,500万円になります。
基本としては7~10段階ほどのウェイトを設けて、信用に応じて与信限度額を変動することです。
万一の場合でも自社純資産の範囲で設定していることから回収できる可能性が高くなります。
どちらの与信限度額設定方法が最適かは展開するビジネスや業務形態によって異なってきます。あるいは自社独自の与信限度額設定方法を設けることで、より正確な限度額を設定して未回収リスクを低減しましょう。
決済代行サービスで与信管理を効率化
以上のように、与信管理を徹底することは企業にとって意外と手間がかかります。そこで与信管理までアウトソーシングできる決済代行サービスを利用するという方法もあります。新規取引先や既存取引先の与信管理を行い、かつ請求業務まで代行するため取引における多くの業務を一気に効率化できます。たとえばヤマトクレジットファイナンスが提供する「クロネコ掛け払い」のように未回収代金を100%保証するサービスを利用すれば、与信基準の作成や評価などの業務から解放され、さらに未回収リスクをゼロにすることも可能です。与信管理や請求業務に負担を感じている場合は、ぜひ決済代行サービスを検討してみてください。
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