仕入債務回転期間と回転率について解説

 2019.11.13  ヤマトクレジットファイナンス株式会社

本稿では、経理知識として欠かせない「仕入債務回転期間」とその「回転率」について解説していきます。それぞれにどういった意味を持ち、どのように使用するのか?気になる方はぜひチェックしてください。

仕入債務回転期間とは?

「仕入債務(しいれさいむ)」とは、未払いになっている支払代金のことを指します。仕入れの際に発生した買掛金や支払手形が該当します。決算書では負債項目に表示される代金のことです。そして、仕入債務回転期間は「仕入債務が発生してから、無くなるまでにかかっている時間」を表しています。

  • 仕入債務が生まれる⇒商品等を他社から購入し、その代金を後払いにしたとき
  • 仕入債務が無くなる⇒後払いにしていた代金を支払ったとき

要するに、商品を仕入れてから買掛金や支払手形が決済されるまでの期間を仕入債務回転期間といいます。

 

仕入債務回転期間の必要性

負債である支払債務は、大きくなるほど将来的に資金繰りが苦しくなる可能性があります。より多くの商品を仕入れるわけですから、仕入れに対して販売数が伸びなければ、代金を支払うためのキャッシュが手元に残りません。また、すでに資金繰りが苦しくなっていることを示す場合もあります。

一方、事業が成長すると売上高だけでなく、資産と負債の規模も大きくなる傾向があります。その際に、会社の事業規模と照らし合わせて「仕入れ債務が増えすぎていないか?」を判断するために必要なのが、仕入債務回転期間という指標です。

 

仕入債務回転期間の計算方法

それでは、どうやって仕入債務回転期間を計算するのか、その方法をご紹介します。まず、計算式としては以下のようになります。

仕入債務回転期間(月)=仕入債務÷1か月あたりの仕入れ

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この計算式は「〇か月」単位で仕入債務回転期間を求めるものです。日数単位で仕入債務回転期間を計算する場合は、計算式の「1か月あたりの仕入れ高」を「1日あたりの仕入れ高」に変換します。

仕入債務回転期間の計算式では仕入債務に何か月分の仕入高が溜まっているかを計算しています。たとえば毎月100万円の仕入れを行い、仕入代金を仕入れの翌々月末に支払っていると仮定します。

1月の仕入高100万円は3月末に、2月の仕入高100万円は4月末に、3月の仕入高100万円は5月末に、といった仕入れサイクルが出来上がります。従って、2月末の仕入債務は1月と2月に仕入れ分の200万円、3月末の仕入債務は2月と3月に仕入れ分の200万円、毎月末日には直前2か月分の仕入が仕入れ債務として残っているというわけです。

ここで仕入債務回転期間の計算式を利用し、3月末の仕入債務回転期間を求めてみます。

 

<3月末の仕入債務回転期間(月)>

200万円(2月末の仕入債務)÷100万円(1か月あたりの仕入高)=2か月

 

このように、同事例の仕入れサイクル(仕入れから決済まで)の期間と同じ2か月が算出されました。要するに、「毎月末の仕入債務残高には2か月分の仕入高が溜まっている(決済されていない)ため、仕入れから決済までに2か月かかっている、ということになります。

 

仕入高を調べるには?

仕入債務回転期間を計算するには仕入高の情報が必要ですが、仕入高は基本的に決算書に載っていません。外部企業の仕入高を調べる際は、決算書以外の情報から見つけ出す必要があり、どの企業も仕入高の金額を公開しているとは限りません。

仕入高を知るためにはまず、有価証券報告書の決算書以外のページを見る必要があります。該当箇所は「第一部>第2事業の状況>2生産、受注及び販売の状況(販売及び仕入の状況)」となります。ただし、有価証券報告書に仕入実績を載せていない企業は多いでしょう。小売業ならば載せている企業も多いものの、それ以外の業種となると仕入実績を知るのは難しくなります。

 

売上原価から仕入債務回転期間を計算する

仕入高情報を取得できないケースが多いことから、仕入債務回転期間を求める際に「1か月あたりの仕入高」ではなく、「1か月あたりの売上原価」に代えて計算することがあります。計算式は次の通りです。

 

<仕入債務回転期間の計算式(売上原価を使う場合)>

仕入債務回転期(月)=仕入債務÷1か月あたりの売上原価

 

日数単位での仕入債務回転期間を求める場合は、前述したのと同じように「1か月あたりの売上原価」を「1日あたりの売上原価」に換算して計算します。仕入債務回転期間は、仕入債務に何か月分の仕入高が溜まっている(決済されていない)かを計算することで、仕入れてから支払債務が決済されるまでの期間を求める指標です。

「仕入高の金額≠売上原価の金額」なので、計算式に売上原価を使った場合は、仕入高を使ったときほど仕入債務回転期間の本来の意味を表せなくなります。ただし、仕入債務回転期間を使用する目的は、企業の規模に照らして仕入債務が増えすぎていないかを知ることです。従って、計算式に売上原価を使っていても、仕入債務回転期間の数値の推移を追っていけば、事業の成長以上に仕入債務が膨らんだサイン(仕入債務回転期間の長期化)に気づくことができます。

 

仕入債務回転期間の回転率を計算する

仕入債務回転期間が長いからといって、単純に業績が悪化しているとは判断できません。取引内容や契約規約によって仕入債務回転期間が長期化しただけかもしれませんし、逆に仕入債務回転期間が短いからといって好調な業績というわけではないでしょう。

そこで、仕入債務回転率を計算し、回転率が適正かどうかを確認します。計算式は下記の通りです。

 

仕入債務回転率=(売上原価÷仕入債務)×100

 

たとえば、売り買いともに現金商売の場合では仕入債務が発生しないため、「(売上原価〇円÷仕入債務0円)×100」で、仕入れ債務回転率は計算不能です。

売上原価が1億円、仕入債務の期末残高が1,000万円の場合は「(売上原価1億円÷仕入債務1,000万円)×100」で仕入債務回転率は1,000%になります。売上原価が1億円、仕入債務の期末残高が2,000万円の場合は「(売上原価1億円÷仕入債務2,000万円)×100」で仕入債務回転率は500%になります。

仕入債務回転率の適正水準は1,200%以上が標準です。仕入債務回転率が標準にない場合、支払い効率が悪く、支払い条件の悪化や支払い遅延のリスクがたかっている可能性が高いことになります。

ちなみに、仕入債務回転率は現金商売や消費者相手の商売に比べて、卸売行や法人相手の商売の方が低くなる傾向にあるため、業界業種によって適正水準に差が生じることに注意が必要です。そのため、上記の適正水準に合致しない場合は、仕入債務回転率の推移を定点観測することをおすすめします。

定点観測の結果、仕入債務回転率が悪化しているようなら支払い効率が悪化している可能性が高いでしょう。

仕入債務回転期間と回転率を計算してみよう!

いかがでしょうか?この機会に仕入債務回転期間と回転率を計算してみて、自社の仕入債務が適正かどうかを確認してみましょう。ぜひ、本稿でご紹介した計算式を使用してみてください。

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