与信限度額(与信枠)の算出方法の考え方

 2019.12.04  ヤマトクレジットファイナンス株式会社

企業間取引(BtoB)における与信取引は、商品を納品してから実際に代金が支払われるまでに一定のタイムラグがあるため、取引先の経営状況悪化等によって代金を回収できないリスクがあります。このリスクが万一現実になったとしても、自社の被害を最小限にとどめるための方法が与信限度額(与信枠)を決めて取引することです。

与信限度額を設定しておけば、代金未回収による経済的損失リスクを最小限にとどめつつ、取引を続けることができます。「どんな取引先にも売りたいだけ売る」では、代金が支払われなかった際に多大な損失を受けることになるため、リスクマネジメントが重要になります。

では、与信限度額はどのように設定すればよいのでしょうか?本稿ではその算出方法と考え方についてご紹介します。

 

与信限度額の算出方法

与信限度額は「何を指標にするか」によって算出方法が異なります。たとえば、自己資本や利益水準など、自社の財務情報を基準としたリスク許容量や、取引先企業の事業規模、自己資本、業績等を指標とする方法などです。

一般的に、毎月の販売予定額に与信期間(回収サイト)を掛け合わせた金額をベースに与信限度額を検討する企業が多いでしょう。

与信取引においては、売掛金だけでの取引ではなく、一部またはすべてが手形取引になる場合があります。ここでは、計算方法が複雑な手形取引の場合の計算方法を紹介します。計算式は下記の通りです。

 

(月間販売予定額×売掛期間の月数)+(月間販売予定額×手形期間の月数)

 

「月末締め翌月末振出、振出日起算90日後手形」という条件で話を進めますと、回収サイトは売掛期間が2か月で手形期間が3か月の合計5か月となります。従って、必要な与信限度額は月間販売予定額を500万円とすると、「月間販売予定額500万円×回収サイト5か月=2,500万円」となり、多少の変動を考慮して2,500~3,000万円で設定するのが一般的です。

 

与信限度額を決定するには

次に、与信限度額の安全範囲について説明します。これは、自社の財務内容や取引先に対するシェアなどに基づいて設定することになります。企業の体力を超えて取引を行うのは危険ですし、販売シェアを取りすぎると徹底しにくくなるケースもあります。従って、与信管理ルールによって取引先のランクごとに与信限度や売込みシェアの目安を決めておくのが一般的です。

 

ランク

倒産確率

与信限度額

売込限度額

A

0.05%

5,000万円

取引先の仕入債務の30%

B

0.25%

2,000万円

取引先の仕入債務の20%

C

0.90%

1,000万円

取引先の仕入債務の15%

D

1.50%

500万円

取引先の仕入債務の10%

E

2.50%

200万円

取引先の仕入債務の5%

F

6.00%

10万円

取引先の仕入債務の0%

 

企業が定める安全範囲に入っているからといって、実際の取引に即していない与信限度額を設定するのは危険です。取引先に対する売上高が通常の2倍3倍となっても、与信限度額を超過せずに、変調に気づくことができない可能性があります。売上が増加している原因は、他の取引先が撤退を開始しているということも考えられ、危険な状態になっている債権をさらに増加させてしまうことになります。必要な与信限度額を常に意識し、設定するよう心掛けましょう。

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次に安全範囲については、自社の財務内容や取引先に対するシェアにもとづいて設定されるものとなります。取引を進める上では、必要な与信限度を考えると安全な与信限度を超えてしまう場合があります。この場合、担保等を取得したり、取引先の動向をいつでも把握できる状態にしておいたりするなどの対策を講じたうえで、1ランク上位の決裁者が取引可否を決定するようなルールを作っておくとよいでしょう。

与信限度額の申請プロセスを作る

与信限度額を社内で決定する際の申請プロセスを作ることで、与信限度額決定をスムーズに行えます。一般的な与信限度額の申請プロセスは、営業部門が申請を行い、管理部門が審議し、決裁者が決済するといった形で行われます。与信限度額や格付け等に応じて審議を行わるか否か、決裁をどのレベル(部長、役員、社長など)で行うかを社内規定で定めましょう。

営業部門からの事前相談でOKが出されれば、会社指定の与信限度額申請書に必要事項を記入して申請します。申請書には、申請する与信限度のほか、資本構成、主要取引先など取引先の経営状態、商品名、取引経路、決済条件、販売予定額、取引開始の経緯などの取引内容、基本契約の有無、取得担保などの管理手法、具体的な営業方針なども説明します。

 

記載項目

詳細

取引経路

商品の流れや納入場所など。仕入からエンドユーザーも含めて全体像を記載

決済条件

現金回収か手形回収か、サイトの長さ、相殺や裏手形回収があるか

販売予定額

予定月商(納品数量、単価)、利益率など

取引開始の経緯

取引動機、紹介先など

基本契約の有無

基本契約の有無や、納品書・受領書の有無など

取得担保

個人保証や不動産その他の担保の有無、その担保価値

今後の方針

営業部としての取り組み方針(営業強化か重点管理か取引縮小か

 

審議を行う管理部門および決裁を行う決裁者が取引可否を判断しやすいよう、評価の手助けになるような資料を与信限度申請書に添付しましょう。必要に応じて商業登記簿(登記事項証明書)や決算書、信用調書、担保、保証内容など十分な資料を添付するようにします。

 

与信限度申請書は、取引をする際のプレゼン資料と位置づけ、しっかり記載するようにしましょう。

与信限度額管理を簡素化するには?

与信限度額の管理は決して容易な作業ではありませんが、与信限度額を設定しなければ代金未回収によるリスクが増大してしまいます。しかし、企業によっては管理業務にリソースを避けない場合も多いため、与信限度額管理および与信管理をいかに簡素化するかが重要になっていきます。

 

簡素化のために効果的なのが、請求代行サービスを利用することです。企業間取引における与信取引にて、取引が発生した時点から代金が回収されるまでの管理を実施するサービスを指します。請求代行サービスの中には取引先の与信管理から与信限度額の設定まで行う場合があります。

そうしたサービスを利用すれば、請求代行サービスが管理する与信情報に従って取引を実施することになるため、自社の与信限度額管理や与信管理の負担が大幅に軽減されます。

また、請求代行サービスは取引ごとに手数料を徴収するビジネスモデルが基本なので、手数料が低くかつ適切な与信管理や請求管理を実施してくれるサービスを選択することが大切です。自社のリスクマネジメントを強化するために、与信限度額管理や与信管理は絶対的に必要なので、これらの業務を効率化したいと考えている場合は請求代行サービスなどの利用をぜひご検討ください。その際にはクロネコ掛け払いをご検討いただければ幸いです。

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