簡単解説!与信限度額(与信枠)の算出方法の考え方

 2024.07.05  ヤマトクレジットファイナンス株式会社

 事業活動を行う上での「与信」とは取引先に対して信用を供与する行為を指します。企業間取引においては、一般的に商品・サービスを先に提供し、後日に代金を請求する「後払い」のケースが多く、こういったお互いの信用に基づいて取引を行うことを「与信取引」といいます。

 企業間取引(BtoB)における与信取引は、商品・サービスを提供してから実際に代金が支払われるまでに一定のタイムラグがあるため、取引先の経営状況悪化等によって代金を回収できないリスクを常に抱えています。このリスクが現実になったとしても、自社の被害を最小限に抑えるための方法が与信限度額(与信枠)を決めて取引することです。

 与信限度額を適切に設定しておけば、代金未回収による経済的損失リスクを最小限にとどめつつ、取引を続けることができます。「取引先を選ばず、相手の要望通り売る」では、代金が支払われなかった際に多大な損失を受けることになるため、リスクマネジメントが重要になります。

 では、与信限度額はどのように設定すればよいのでしょうか?本稿ではその算出方法と考え方についてご紹介します。

与信限度額とは?その算出方法

 与信限度額とは、掛け取引などの信用取引を行う際に取引先ごとに設定する取引上限額のことです。この上限額を適切に設定することにより、入金遅延や貸し倒れなどが発生した際には、その被害額を自社で設定した一定範囲内に抑えることができます。

 では、与信限度額はどのように設定すればいいのでしょうか。

 与信限度額は「何を基準にするか」によって算出方法が異なります。たとえば、自己資本や利益水準など、自社の財務情報を基準としたリスク許容量や、取引先企業の事業規模、自己資本、業績等を指標とする方法などがあります。

 今回紹介するのは、一般的に取引先の平均請求額を基準とした与信限度額の算出方法です。これは与信管理が初めてのスタートアップ企業などにも早期に導入できる方法となっています。最初に適切な期間(1,2年間)を定め、その期間中の1取引先当たりの平均請求単価を算出し、算出した金額に売掛金の回収サイトを掛け合わせ、最後に自社で定めた社内格付け表に当てはめて限度額を算出します。

請求単価ですが、1取引先当たりの平均請求単価に支払いサイトが1ヶ月以上先の場合はその月分を掛け合わせます。

  一ヶ月分の平均請求単価×支払いまでに経過する月数(支払いサイト月数)

                     = 与信限度額(平均請求単価基準)

(例)1取引先当たりの平均請求単価が100万円で、支払いサイトが月末締め翌月末払いのケース
    100万円 × 2ヶ月 = 200万円

 その金額を社内格付けの基準値とし、そこから粗利率や自社の財務情報を組み合わせて、格付けランク(※次項にて紹介)ごとに与信限度額を設定していきます。

 また併せて、自社の売掛債権全体を基準として算出する方法も紹介いたします。自社の売掛金や受取手当などの売掛債権全体に対して、一定割合をかけて、格付けランクを考慮して与信限度額を設定する方法です。ここでの一定割合とは、取引先に貸し倒れが発生した場合、リスクを最低割合に抑えるために設定されている数字で、多くの企業で10%程度に設定されています。以下がその算出方法になります。

   自社売掛債権全体×一定割合(約10%)×格付けランク = 与信限度額

(例)自社の売り上げ債権が3000万円、取引先の格付けBランク(2.00)のケース
   3000万円 × 10% × 2.00 = 600万円

この方法は、売掛債権が一定割合を超えないような計算式になっており、取引先が多く、売掛債権の合計金額が大きい企業が採用しやすい方法となっています。

与信限度額の基準のたて方

 次に与信限度額の取引基準について安全範囲の視点を交えて説明します。これは、自社の財務情報や取引先に対するシェアなどに基づいて設定することになります。自社の許容値を超えて取引を行うのはリスクを上げる行為になりますし、販売シェアを確保しすぎるとリスクを徹底しにくくなるケースもあります。そのため、与信管理ルールによって取引先のランクごとに与信限度や売込みシェアの目安を決めておくのが一般的です。以下がリスクごとに定めた取引基準表の一例になります。

ランク

倒産確率

与信限度額

売込限度額

A

0.05%

5,000万円

取引先の仕入債務の30%

B

0.25%

2,000万円

取引先の仕入債務の20%

C

0.90%

1,000万円

取引先の仕入債務の15%

D

1.50%

500万円

取引先の仕入債務の10%

E

2.50%

200万円

取引先の仕入債務の5%

F

6.00%

10万円

取引先の仕入債務の0%

 とはいえ、企業が定める取引基準ルール内であるからといって、実際の取引に見合っていない与信限度額を設定するのは危険です。よくあるケースとしては、取引先の取引規模拡大により、売上を上げるほうに意識が傾き、与信管理に目が届かなくなるケースです。この場合、万が一貸し倒れが発生した際に多大な損害を自社が被ります。取引額が増加している理由としては、取引先が成長しているなどのポジティブ要因も考えられますが、反対に他の取引企業が撤退しており、そのシェアが自社に移っている等のマイナス要因の可能性も考えられます。そのため、取引額が増加するタイミングでは、与信限度額の見直し等の改定が必要になります。

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 また、取引を進める上では、必要な与信限度を考えると安全な与信限度を超えてしまう場合があります。この場合、担保等を取得したり、取引先の動向をいつでも把握できる状態にしておいたりするなどの対策を講じたうえで、1ランク上位の決裁者が取引可否を決定するようなルールを作っておくとよいでしょう。

与信限度額設定のポイント

 ここまで与信限度額の概念、設定方法や取引基準について説明しましたが、これらを活かし、円滑な運用をするための重要ポイントを2つ紹介いたします。

 1つ目は、与信限度額の申請プロセスを明確化することです。与信限度額の申請プロセスを作ることで、与信限度額決定をスムーズに実行できます。一般的には与信限度額の申請プロセスは、営業部門が申請を行い、審査部門が審議し、決裁者が決済するといった形で行われます。前章の取引基準表にある格付けランクや与信限度額等の判断材料に応じて、審議可否やどの決裁者に承認するか社内でルールを決めておくことをおすすめします。下記の表に申請書の記載項目をまとめましたので、参考にしてください。

記載項目

詳細

取引経路

商品の流れや納入場所など。仕入からエンドユーザーも含めて全体像を記載

決済条件

現金回収か手形回収か、サイトの長さ、相殺や裏手形回収があるか

販売予定額

予定月商(納品数量、単価)、利益率など

取引開始の経緯

取引動機、紹介先など

基本契約の有無

基本契約の有無や、納品書・受領書の有無など

取得担保

個人保証や不動産その他の担保の有無、その担保価値

今後の方針

営業部としての取り組み方針(営業強化か重点管理か取引縮小か)

 審議を行う管理部門および決裁を行う決裁者が取引可否を判断しやすいよう、評価の手助けになるような資料を与信限度申請書に添付しましょう。必要に応じて商業登記簿(登記事項証明書)や決算書、信用調書、担保、保証内容など十分な資料を添付するようにします。与信限度申請書は、取引をする際のプレゼン資料と位置づけ、しっかり記載するようにしましょう。

 2つ目は、専門部署の設立です。与信管理には外部情報の入手、取引先の調査や細かい限度額の設定など多くのプロセスを踏む必要があります。そのため多くの時間を要することになり、責任も重大になってくるため、与信専用の部署を立ち上げることをお勧めします。

 しかし、多くの会社が人材やそれに係る費用の発生などの問題があることから、実現が難しいケースも多々あります。担当営業に与信も任せている企業もありますが、営業本来の役割は会社により多くの売上を持ってくることにあります。そのため与信に多くの時間を費やし、営業にかける時間が少なくなってしまったら本末転倒です。また営業に過度なプレッシャーを与え、フットワークが重くなってしまうことにもなりかねません。よって営業担当ではなく、専門部署に任せることにより、専門性に特化した与信判断や営業の事務効率化などのメリットも発生し、円滑な運用に結び付きます。

与信限度額管理を簡素化するにはどうしたらいいの?

 与信限度額の管理は決して容易な作業ではありませんが、与信限度額を設定しなければ代金未回収による大きなリスクを抱えることになります。しかし先述した通り、企業によっては管理業務体制が整っていなかったり、そこにリソースを費やせないケースも多いため、与信限度額管理、および与信管理をいかに適切に簡素化するかが重要になってきます。

 簡素化のために効果的なのが、決済代行サービスを利用することです。企業間取引における初めの与信取引にて、取引が発生した時点から代金が回収されるまでの管理を代行するサービスを指します。決済代行サービスの中には取引先の与信管理から与信限度額の設定までを行う場合があります。

 そうしたサービスを利用すれば、決済代行サービスが設定する与信基準に従って取引を実施することになるため、自社の与信限度額管理や与信管理の負担が大幅に軽減されます。

 決済代行サービスは取引ごとに手数料を徴収するビジネスモデルが基本なので、手数料が低く、かつ適切な与信管理や請求管理を実施してくれるサービスを選択することが重要です。自社のリスクマネジメントを強化するために、与信限度額管理や与信管理は必須なので、これらの業務を効率化したいと考えている場合は決済代行サービスなどの利用をぜひご検討ください。

 弊社が提供をする「クロネコ掛け払い」は、法人取引を行う様々な業界の企業様にご利用をいただいています。新規取引先の与信管理を行うことで、今まで取引を行ってこなかった別業界のお客様との取引が可能になった例や、ヤマト運輸との連携で遠方のお客様との取引を開始された等の成功実績も多数ございます。

 もし皆様の会社で取引先の与信管理によるお悩み事や課題等が発生しているのであれば、ぜひ「クロネコ掛け払い」をご検討ください。

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