刑事事件が一定期間経過すると、一部の犯罪を除いて“時効”によってその罪が問われなくなる、ということはみなさんもご存知の法的知識です。では、企業間取引で発生した売掛金が、時効により消滅することがあるのはご存知でしょうか?
売掛金とは“債権”ともいって、商品やサービスに対する代金を請求する権利になります。つまり売掛金がある状態とは、商品やサービスを提供したが実際に収益はまだ得ていないという状態です。
そのため企業にとって売掛金回収は資金繰りのために生命線ともいえる業務で、売掛金を適切に管理し回収活動を実施しないと、たちまち経営は行き詰ってしまいます。しかも売掛金には時効があるというのですから、なおさら回収は確実に行わなくてはなりません。
今回は売掛金の時効に関する知識、回収方法についてご紹介します。
売掛金の時効とは?
時効には“消滅時効”と“取得時効”、それと“公訴時効”という3つの種類があります。取得時効とは他人の物または財産を一定期間、自分のものと信じ込んで占有しているとその所有権を得られるという制度です。また、公訴時効は刑事事件に発生する時効です。消滅時効は、権利者の権利を一定期間行使しないことにより、その権利が消えてしまうという制度です。売掛金の時効は権利行使に関わるため、消滅時効にあたります。
消滅時効の主旨は「売掛金を請求する権利があるのに何もしないで放置していると、その権利を認めませんよ」というものになります。
借金返済に困った人がよく夜逃げをするのは、請求業者から逃げるだけではなくこの消滅時効を成立させるという理由もあるでしょう。要件を満たして一定期間経過すれば、債務が消滅するからです。
では、売掛金はどれくらいの期間が経過するとその権利が消失してしまうのでしょうか?これは販売するモノやサービスによって違います。
時効期間 |
債務 |
1年 |
飲食代、宿泊費、運送費 |
2年 |
製造業・卸売業・小売業の販売代金、弁護士報酬 |
3年 |
医療費、工事の設計、施行などの工事代金、自動車修理費 |
5年 |
上記以外の取引 |
この一定期間に一切返済がなかったり、売掛金債権を行使するような行動が無ければ時効が成立します。
売掛金の消滅時効を中断するには?
売掛金が時効になると損失以外のなにものでもありません。そのため、売掛金の時効は絶対に避けるべきなのですが、時効期間が迫っている場合どうすればよいのでしょうか?実は次の行動をとることで売掛金の時効を中断できます。
請求行為
債権者が債務者に次のような請求行為を行うと時効が中断になります。
訴状の提出
時間と手間はかかりますが訴訟を起こすことで、訴状が提出された時点で時効が中断します
支払い催促
債権者が契約書や債務確認書といった証拠品を持参し簡易裁判所に申し立てると中断します。
調停申し立て
調停委員会が当事者の言い分を聞き、必要ならば事実調査を行い、条理にもとづいて当事者双方の歩み寄りを促し、当事者の合意によって解決を図る手続きです。
即決和解申し立て
裁判所を通さず訴状提出前に和解を行うことです。余計な費用はかかりませんし、和解がうまくいけば時効が中断します。ただし、和解したその日から1ヵ月以内に訴状の提出をしないと時効中断の効力が無くなります。
催促書類の提出
裁判になる前に「返済してほしい」という内容の書類を債権者から債務者に向けて、内容証明郵便で送付することで一時的に時効を中断できます。
差し押さえ
訴訟や支払催促によって裁判所が債権者に強制執行の許可を出すと、債権者が債務者の財産を差し押さえることができこれにより時効が中断します。ただし差し押さえには債権者にリスクもあります。すべての財産を差し押さえられるわけではなく、かつ判決が得られていない状態で債務者の預金等を拘束するため、債務者に配慮する必要があります。
債務の承認
債務の承認とは、債務者が債務の存在を認めることです。債務者が1円でも返済したり、支払い約束証などにサインをした場合、債務の承認にあたり時効が中断します。さらに、債務の承認は時効期間が満了した場合でも時効を中断する効果があります。
経営者と法人格は別?
売掛金の時効とは無関係ですが、一つ覚えていただきたいことは「経営者と法人格は別」ということです。たとえばとある企業と取引を行った際に、売掛金を回収する前にその企業が倒産したとします。しかしその経営者だった人物に売掛金を請求しても、その人物は売掛金を支払う義務がありません。
これは、企業を経営するのは人ですが企業の法人格と経営者はまったく別という考えに基づいています。売掛金が時効になるわけではありませんが、時効にならずとも売掛金が回収できなくなるケースもあるのでご注意ください。
売掛金回収のためのアクション
売掛金に時効がある以上、代金未払いの案件に関しては素早く回収のためのアクションを実行することが大切です。ここでは強制執行以外の具体的な売掛金回収アクションをご紹介します。
電話で請求する
一番手軽でダイレクトに請求できる方法です。債務者に多少なりとも支払う意思があれば必ず対応しますし、具体的な支払いプランを聞くこともできます。電話での話し合いができたら必ず期日を24時間以内に設定し、それでも支払いが無ければ再度催促を行います。
請求書発行
正式な請求書を発行・送付するのは債権者にとっても精神的負担が少なく、かつ債務者に圧力をかけられる方法です。あまりにも支払いに応じない場合は内容証明付きで請求書を発行しましょう。
実際に訪問する
請求が長い間滞っている案件の場合、相手先に訪問するというのも一つの手段です。そのための時間や手間はかかりますが、直接圧力をかけられるため効果的です。ただし過度の訪問は立場が逆転する可能性があるため注意しましょう。
公正証書
公証人役場で公正証書を作ってもらうと、そこに書かれているとおりに支払いをしなかった場合、裁判なしでいきなり強制執行ができるようになります。公正証書を作成するためには、債権者の実印付き委任状や印鑑証明が必要です。
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代金未回収リスクを低減するには?
「売掛金の時効なんてそうそう発生しないだろう」と考える方が多いかもしれませんが、実は意外と多く発生します。これは債権者も売掛金を適切に管理できていないことから発生し、最終的に売掛金をまったく回収できなくなるのです。
それでは、そもそも代金未回収リスクを低減する方法はないのでしょうか?その答えの一つがヤマトクレジットファイナンスが提供する“クロネコ掛け払い”です。このサービスは企業間取引が成立した時点で、その売掛金の管理や請求業務を当社が代行するという、請求代行サービスです。
ヤマトクレジットファイナンスが持つ請求ノウハウを集結してサービスを提供するため、それだけでも代金未回収リスクを大幅に低減できます。しかしそれだけではありません。クロネコ掛け払いでは“代金100%保証”でサービスを提供しているので、万が一取引先から期日までの支払いがなかった場合、その代金をヤマトクレジットファイナンスが100%保証します。
つまり、クロネコ掛け払いを利用していただくと代金未回収リスクをゼロにして、安心して取引を実行していただくことができるのです。
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請求業務はアウトソーシングの時代!
売掛金は厳密に管理しないと消滅時効の対象となり、最終的に大きな損失を生んでしまう可能性があります。このようなリスクを回避するためにも、請求代行サービスの利用には大きなメリットがあります。この機会にぜひクロネコ掛け払いをご検討いただき、未回収リスクを低減してビジネスに集中していただければと思います。
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