企業間取引というと、従来は電話やFAX、あるいは営業担当者による直接訪問での受注が主流でしたが、ニーズの高まりやインターネットの普及によりBtoB ECの市場規模が拡大し続けています。BtoB ECは受発注業務効率化や売上アップといったメリットがあることから、導入企業が年々増加しています。ここでは、BtoB ECの市場規模の他、導入のメリット・デメリットやBtoB ECを設置するサイトの種類などをご紹介します。
BtoBにおけるEC化について
ECとは電子商取引(Electronic Commerce)を意味しており、BtoB ECとは「企業間における電子商取引」のことを指します。BtoBにおけるECの取引形態は大きく下記の2つに分けられます。
EDI(Electronic Data Interchange)
EDIとは直訳すると電子データ交換となります。主に大企業間での取引に使われており、予め決められたルールやフォーマットに基づいて帳票のやりとりを行う取引形態です。専用回線やインターネットを介して取引情報のやりとりを標準化できるので、紙の帳票を作成する手間やコスト削減に繋がるだけでなく、データの一元管理も可能となります。
ECサイト
法人向けの製品・サービスを企業が企業に対してwebサイト上で販売することです。EDIは基本的には予め決められた企業間同士の取引にしか使えませんが、ECサイトは誰でも閲覧可能なwebサイトで販売されていることが大きな違いになります。ASKULやモノタロウがこれにあたりますが、それまで閉鎖的であった企業間取引はこのようなサイトの登場により大きくかわりました。
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BtoB ECの市場とEC化率
働き方改革やコロナ禍などの影響もあり、多くの企業が電話やFAXといったアナログな受発注からBtoB ECによる受発注へシフトしています。経済産業省が2023年8月に発表した「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)報告書」によると、日本国内のBtoB EC市場規模は420.2兆円(前年372.7兆円、前々年334.9兆円、前年比12.8%増)に増加しました。また、EC化率はBtoB ECで37.5%(前年比1.9ポイント増)とこちらも増加傾向にあり、商取引の電子化が進展しています。
出典:経済産業省 「電子商取引に関する市場調査の結果」
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002.html
EC化が進む理由とは?
従来の企業間取引は、営業担当者が取引先に訪問し営業活動を行う「アウトバウンド型が」が一般的でした。それがEC化による「インバウンド型」へとトレンドが変わりつつあるのには、下記のような理由があります。
徹底される業務効率化
少子高齢化が進み、年々労働生産人口が減少を辿っています。このような状況下において企業が継続的に成長するには、限られた人数で最大の効果を出さなければなりません。EC化はその手段のひとつです。労力と時間を使って営業を行うのではなく、ネット上に情報を発信し興味のある見込み客に自ら来てもらう必要性が増してきました。
顧客の購買行動の変化
インターネットが今ほど普及する前は、企業間取引において商品に関する情報を入手することは難しく営業担当者から直接情報を得る必要がありました。しかしインターネットが普及した現在ではネットから情報を簡単に入手することが可能となり、他社との比較や購入も完結できるようになりました。こうした環境の変化が要因となって購買行動の手法が大幅に変わったことも、EC化が進んだ理由のひとつと言えます。
BtoB ECカートシステムの普及
ここ数年で数多くのBtoB ECカートシステムやアプリケーションが開発され、使いやすく利便性も高まり、価格もリーズナブルになっています。また在庫ソフトや経理ソフトなどと連携できるシステムも増えており、中小企業、個人事業主でも導入しやすくなってます。
EC化のメリット
ここでは、企業間取引をEC化するメリットについて主なものをご紹介します。
メリット①:受発注業務の自動化・標準化
企業間取引のEC化により受発注業務が自動化・標準化されるので、手書きの書類を読み取る、作成する手間がなくなります。これによりミスが減り業務効率化が行えます。
メリット②:商圏の拡大
営業担当者による営業活動の場合、移動可能な範囲に商圏が限定され、交通費はもちろんのこと移動時間というコストも避けられません。一方、ECであれば商圏は日本全国、言語や配送の問題をクリアすれば世界中に拡大可能ですし、注文も24H受け付けられるので様々な制限がなくなります。
メリット③:販売チャネルの増加
EC化をしても、完全に営業担当者による営業活動がなくなるわけではありません。例えば、既存顧客は営業担当者がフォローし新規顧客はECへ誘導するというような「販売チャネルの増加」と主担当を分けて考えると、高い効果が期待できるでしょう。
メリット④:顧客獲得コストの削減
アナログな営業活動では、商品の告知をするにしても、営業担当者の人件費・交通費・移動時間といった様々なコストが発生します。一方、EC化することで売り手企業は商品の情報を発信し、買い手企業は24H、その情報を得ることができるようになります。更に数多くの企業に同時に情報発信できるので、顧客獲得における大幅なコスト削減が可能となります。
メリット⑤:商品管理の自動化
EC化は上記にあげたメリットだけではなく、商品管理が自動化されるといった点でもメリットがあります。特に複数の商品を取り扱っている企業は、アナログで商品管理するのは極めて困難です。EC化により自動で一括管理できれば、管理の手間が省けることに加え、ミスが起こるリスクも減るでしょう。
EC化のデメリット
続いて、企業間取引をEC化するデメリットについて主なものをご紹介します。
デメリット①:ECサイトの構築・管理コスト
EC化するには、構築・維持管理コストがかかります。大規模なECを構築するとなると、構築費は数百万円を超えるケースもあります。商品数や運用など、自社にあったECを構築することがポイントとなります。大規模な構築は後回しにし、安価なサービスを利用してとりあえず始めてみるスモールスタートもおすすめです。
デメリット②:企業間取引の決済方法の準備
企業間取引の場合、注文後、商品を先に発送し支払いはまとめて翌月末、といった「掛け売り」も珍しくありません。ECサイトを構築する段階で、BtoB向けの決済方法の準備も必要となります。また企業間取引においては、取引先によって販売価格が異なるケースもあります。このようなことにも対応できるシステム選びが必要となります。
BtoB ECサイトのタイプとは?
ここでは、BtoB ECサイトのタイプについて解説します。
クローズドBtoB型(EDIを含む)
◇目的:自社の受注業務の負荷を軽減すること
◇ターゲット:既存顧客
◇特徴:既存顧客ごとに、商品価格や販売可能商品が異なる
スモールBtoB型(スモールB)
◇目的:新規顧客開拓、売上増加
◇ターゲット:新規見込み客
◇特徴:日本中からECを使って見込み客を開拓できる
BtoB ECの構築方法とは?
ECの構築方式は、主に3種類に分類されます。それぞれの特徴を解説します。
ASP(SaaS・クラウドサービス)
ASPとは「アプリケーションサービスプロバイダ」の略で、インターネットを経由してソフトウェアやソフトウェア稼働環境を提供する事業者のことを指します。月額使用料を払いながらシステムのレンタルを行う形式のため、自社でシステムを構築する必要はありません。導入コストが比較的安く、稼働までの期間が短い上にバージョンアップやセキュリティ対策などもサービス提供会社で行うため、運用が楽というメリットがあります。一方、自由度が低く柔軟性に欠けることがデメリットとなります。独自の運用フローがある、商慣習による特殊な単位が発生する等の場合であったり、商品数が多く大規模なビジネスを行いたい場合は不向きになる可能性があります。
■パッケージ
業務に必要な機能がパッケージ化されており、必要に応じてカスタマイズできる方式です。在庫管理や商品管理など、最低限必要な機能はもともと備わっているのでゼロから構築する必要はありません。オプション機能の追加やカスタマイズ可能なECシステムもあるので、コストを抑えつつ自社に合ったECを構築した企業にはオススメの方式です。ASPと比較すると大規模ビジネスにも対応している場合が多いです。また、データをクラウドで構築するか、自社サーバに構築するかが選べるサービスもあるのが特徴です。クラウド構築するパッケージサービスのことをSaaS(サース)と呼ぶこともあります。事前の要件を決める必要があるのでASPと比較すると稼働までの時間がかかり、価格も高くなる傾向があります。
■フルスクラッチ
フルスクラッチとは、ASPとは対照的でゼロからECサイトを構築する方式です。完全にオーダーメイドで作れるため、自社の要望を全て実現できることがメリットと言えるでしょう。ただ、ゼロからの開発で稼働まで時間がかかる上、パッケージよりもコストは高くなります。さらにシステムに知見がある担当者も必要となる場合が多く、ハードルが高い方式といえるでしょう。
おわりに
B2B向けECサイトを構築するにあたり大切なことは、何もかも最初からすべての業務フローをシステム化するのではなく、業務負荷が多い箇所をメインにECサイト化していくことです。最初から複雑な処理をすべてシステム化で構築するには時間がかかりますし、長い時間をかけて検討した結果、実現できない場合もあります。大体70~80%程度の完成度を目指し、必要に応じて適宜改善を加えていく方が目的のECサイトにより早く近づけます。この機会に、B2B向けECサイトの構築を検討されてはいかがでしょうか?
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