「消し込み作業」といえば、経理業務の中でもトップクラスに負荷の高い作業です。加えて重要性も非常に高いので、おろそかにはできず、毎月経理部の多くが消し込み作業によって月次締めが遅くなったりと、いろいろと課題を抱えています。
本稿ではそんな消し込み作業について、その概要と一般的な課題とともにその大変な作業から逃れる方法について提示します。
消し込み作業とは?
経理部でなければ「消し込み作業(入金消し込み作業)」と聞いて大変な作業だというイメージは湧きませんが、消し込み作業を知っている人からすればその言葉を聞くだけで気分が憂鬱になるほどです。
「消し込みって何?大変な作業を改善する方法」について詳しくご覧ください!
この作業は売掛金や未収入金などの請求額と、実際の入金額を照合し、残高を消していく作業のことです。この説明を聞いても消し込み作業の大変さはまだ理解できないでしょう。売掛金の仕訳は一般的に次のように処理されます。
12月1日に108,000円のものを売上げた
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12月1日 売掛金 108,000 / 売上 100,000
仮受消費税 8,000
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12月15日に108,000円が入金された
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12月1日 預金 108,000円 / 売掛金 108,000円
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これがいわゆる消し込み作業です。借方に出てきた売掛金は仕訳にて、貸方にきて売掛金が消えます。このように売掛金を消していく作業が消し込み作業となります。ちなみに売掛金だけでなく、買掛金や減価償却費累計額などあらゆる債権と債務の科目に消し込み作業があります。
消し込み作業はなぜ大変なのか?
ここまでの説明でも消し込み作業の大変さはまだ理解できないかと思います。「売掛金と入金明細を突き合わせて消し込むだけでしょ?」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。たとえば12月20日の時点で以下のような売掛金が残っていると仮定します。
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25,686
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68,753
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67,751
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12,420
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66,141
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59,460
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14,893
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41,251
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35,217
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96,249
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53,786
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90,833
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こうした売掛金情報が何百個も続いています。これに対し、12月20日に以下のような入金があったとします。
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14,893
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68,753
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25,686
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12,420
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67,751
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59,460
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66,141
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90,833
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35,217
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96,249
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53,786
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41,251
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このように、膨大な量の売掛金情報と入金明細を突合し、消し込み作業を行っていかなければならないわけです。さらに、すべての売掛金を消し込めるわけではなく、支払期限が守られず予定通りの入金がない売掛金もありますし、顧客が間違えた金額を振り込んでしまって数字がずれている場合もあります。こうした「誤差」が消し込み作業を難しくしている大きな原因です。
振込手数料や消費税計算方法の違い、経費や売掛金との相殺、おまとめ入金など理由は様々であり、請求先の会社名と振込依頼人名義が相違するという問題もあります。その会社で長年経理を務めているベテラン社員でもあれば、こうした「誤差」を頭で理解しつつ消し込み作業に取り組めるでしょう。しかしそれでは消し込み作業が「属人化」していることになるため、ベテラン社員に負担が集中し生産性が下がってしまいます。
消し込み作業が属人化することのリスク
消し込み作業の「属人化」が起こることで生産性が低下するだけでなく、会社にとって大きなリスクを抱えることになります。特定の社員しか消し込み作業が行えないということは、その社員は「休めない」という状態になります。特に繁忙期では本業のかたわら消し込み作業を行っていくことになるので、肉体的負担はかなり大きくなるでしょう。
さらに、消し込み作業が会社のお金を扱っていることから心理的負担も大きくなってしまいます。にもかかわらずその負担を分散できないので、その社員にかなりの負担を背負わせることになるでしょう。
もっと危険なのはその社員が退職してしまったときです。急な退職では引継ぎもままならず、消し込み作業を正しく行える社員が組織からいなくなってしまいます。そうなると消し込み作業は滞り、会社のキャッシュフローも悪化するでしょう。消し込み作業が終わらないといつまでも次の請求書が発行できないので、さらにキャッシュフローは悪化していきます。
このように、消し込み作業は会社の経営活動にとってとても大切な経理業務であり、かつものすごく大変な作業なのです。
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システム化が進んでいないのはなぜ?
ビジネスが持つ課題を解決するための有効策が「システム化」です。ITの力を駆使して業務プロセスの一部または全部をシステムに置き換えることで、大幅な業務効率アップが期待できます。実際に各部門でシステム化は進み、今では部門ごとに最適化されたシステムが24時間年中無休で稼働しています
しかしながら消し込み作業においては、現在でも前述のように手作業で取り組んでいる企業は少なくありません。それは消し込み作業が持つ複雑性だったり、正確性が強く要求される経理業務だからということが起因しています。
企業間取引の場合、支払期日や支払方法、請求フローなどを買い手側に合わせなくてはならないケースが少なくありません。取引先によって月末締め翌月払いや翌々月払いだったり、決算手段が半分現金半分手形や振り込み以外と異なるケースもあります。したがって売り手側は消し込みを行うタイミングや留意点が替わってしまうために、消し込み作業に使える汎用的なシステムが生まれにくい状況にあるのです。
会計システムやERP(統合基幹系システム)に消し込み機能を実装している企業もありますが、取引先の請求フローによってはフィットしないため、アドオン開発が肥大化しているという問題もあります。
それでもシステム化を選択するか?アウトソーシングするか?
消し込み作業特有の課題を解決する方法としては、100%は不可能にしてもシステム化によって可能な限り対応するか、消し込み作業自体をアウトソーシングするかという2つの選択肢があります。システム化では取引先によってフィットしないケースもあるので、アドオン開発も視野に入れた構築が必要です。
アウトソーシングの場合、コストはかかりますが消し込み作業をまるごと効率化できるというメリットがあります。最近では日本でもアウトソーシングへの抵抗感が低くなってきており、利益に直結しない定型作業は委託するという考え方が拡大しています。
ヤマトクレジットファイナンスが提供する「クロネコ掛け払い」は、面倒な請求業務の一切をアウトソーシングできるサービスです。消し込み作業を効率化したい、そんなときはぜひご検討ください。
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